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仮説的に、九州への代替基地移設の可能性を考える /普天間問題と斬首戦略について

■これまでの斬首戦略に関する拙論のおさらい■
・ソ連による、アフガンのアミン大統領暗殺作戦は、台湾での斬首戦略の参考にはなりません。
・台湾側の軍事指揮権について、総統継承順位の法的整備のことは、念頭にありますか?
・海兵隊だけでなく、台湾の部隊(特殊部隊含む)のことも気にかけてあげてください。
・中台問題の発端は、米日の二股外交にある以上、軍事より先に、外交で片をつけてほしいと思います。
・沖縄の海兵隊駐留云々よりも、米国海兵隊の台湾派遣を、米国に対して法的に義務付ける方が、先です。

■「会議室」対「現場」? 斬首戦略の現実性について■
 さて、斬首戦略ですが、実はこれに否定的な学者もいます。テロ分野の研究で知られる、ロバート・ペイプです。斬首戦略は既に、アカデミックに論争を引き起こしていたようで、どうやらこの論争は「空軍関係者や政府高官などの間では明らかにワーデンの首切りを支持するものが多いのですが、国際関係論の学者(当然リアリストたち)の間では明らかにペイプの支持をするもの、という風にハッキリとわかれ」るようです(「首切り戦略:その2」『地政学を英国で学ぶ』様)。現場と学者の相違、ということなのでしょうか。
 しかも、「首切りで解決しない例としては、パレスチナのヤシン氏の件があると思います。一国の元首とは違い、武装組織を相手にした場合、いったんリーダーを殺害した場合でも、次から次へと新しい指導者が出てきて結局泥沼になってしまうというケースが良く見られます」。「ミアシャイマー(とペイプ)はまさにこういう観点から「首切り戦略」は効かないと論じております」(出典同上)。なので台湾を、指導者の引継ぎが凄くスムーズな体制にしておくのも、ひとつの方法かもしれません。その点で、前回の拙論には、相応の説得力がある、と自賛しておきたいと思います。

■主力部隊つきの場合の斬首戦略?■
 「中国の特殊部隊が台湾行政府・軍指揮施設を占拠し,台湾軍の指揮系統を麻痺させ,本隊の侵攻を助けようとする手段に出て来た場合」とか、「特殊部隊だけで全てを完遂する作戦は少し考え難いのですが,主力部隊と呼応しての作戦ならば十分に有り得る事です」というふうにおっしゃっています(出典既出)。なので、この作戦は、特殊部隊と主力部隊とが連携するパターンもあるようです。しかしそうなった場合、別の困難が待っています。
 「一台湾人」という方のご意見です(「海兵隊関連」『軍事板常見問題&良レス回収機構』様)。まず、「増援部隊集合,待機→特殊部隊出発,台湾政府制圧→増援部隊出発,という寸法」を想定されており、「大部隊の集合は非常に察知しやすく,我々の政府要人は恐らく敵部隊集合中を察知した時点で,どっかに疎開します」と指摘しています。
 また、「台湾の戦闘機,防空ミサイルをどうやって片付けるのか?」。仮に中国のミサイル攻撃で空港滑走路を破壊するにしても、ミサイルの場合、「固定サイロなら燃料注入時に察知できるし」、「平時は格納庫に格納しているので,運び出した時点でばれます」。「戦闘機は,中国がミサイル発射を準備し始めた時点でスクランブル離陸し,空中に退避待機させます」。主力部隊が備えるシナリオの場合、作戦成功にはこうした困難が待っています。
 この方は、「私は,特殊部隊の狙いは政府要人などよりも,こういう固定基地への襲撃だと思います.結論からいうと,台湾の防空戦力が生きているうちでは,特殊部隊も増援部隊も無事到着すら難しいです.」というご意見のようです。確かにこちらの方が現実性があります。台湾側の地上戦力による反撃なども考慮に入れるかぎり、この予測に賛成です。大陸側・台湾側の相互の戦力を測る限り、大陸側の主力部隊による台湾制圧の成功の可能性は、低いものとみるべきでしょう。
 米海兵隊が「台湾が自ら中国の手先になる可能性」までも想定しての台湾有事用という意見については、賛否あるでしょうが、可能性は否定できません。
 以上をふまえると、大陸側の特殊部隊が、主力部隊との連携をとろうとすると、動きを察知されて、特殊部隊の活動の有効性を落としてしまう、というわけです。(注1)
 特殊部隊単独の場合については、既に説明したとおり、斬首戦略の成功の確率はほとんどありません(歴史的見地から考えて前例がないうえに、不確実性が高過ぎる)。そんなことを考える暇があるなら、大陸側による国家テロの心配をした方が早いように思います。そしてこの対策というのは、台湾側の警察機関がメインの仕事でしょう。斬首戦略というのは、大陸側が、本格的な国家テロを仕掛けてきてから、心配するべきことなんじゃないでしょうか。何事においても、順序というのは大切だと思うのです。

■仮説的に、九州への代替基地移設の可能性を考える■
 突然ですが、小川案よりも一層現実的な案は無いのでしょうか。普天間基地の代わりとして、キャンプハンセンに基地を新設して、そこを有事のために空けておくという小川案ですが、結局、県内に基地があることには変わりありません。(注2)そこで岡本智博「「普天間基地」移設問題の本質について」(『特定非営利活動法人 ユーラシア21研究所』)という論説を呼んでみることにします。
 まず、「平時において紛争を抑止する機能を重視すれば、事前に前方駐留(Forward Presence)しておくことには意義がある」というのは、おそらく間違っていないはずです。これは、他の要因との勘案で、つまり政治的利害・経済的利害・予算的利害などとの関係の中で、決定されるべきでしょう。要するに、日米間で政治的に、「前方駐留」できない、と決定することも出来るでしょうし、日本側が、お金出せません、といって「前方駐留」を拒否するのもありえる話です。
 それはともかく。彼の意見は、「辺野古地区には将来は民間空港に移管されることを条件に、微修正を含む現行案で米海兵隊の航空部隊移駐施策を了承する。そして、米海兵隊の陸上部隊の移設先として、長崎県佐世保市相浦に所在する陸上自衛隊駐屯地を明け渡す。」というものです。「代わりに陸上自衛隊はキャンプ・ハンセンに移駐し、新たな駐屯地を開設して陸上自衛隊の沖縄配置を実現する。そして、米海兵隊航空戦闘部隊は長崎空港に移駐し、民間との共用により新たな部隊運用を開始する。」という案だそうです。九州への移設に、可能性はあるでしょうか。
 この問題については、「ヘリコプターの進化と沖縄海兵隊ヘリ部隊の合理性」(『週刊オブイェクト』様)という記事が参考になります。
 「例えばもし、揚陸艦を用いて台湾への支援に向かう状況が生じたとしても、佐世保から台湾へ向かう途上に沖縄があるので、ホワイトビーチに立ち寄って地上部隊を回収し、洋上でヘリを収容しつつ向かえば時間的ロスは殆ど有りません。仮に地上部隊を佐賀県に置いても、装甲車など重装備を搬入する時間は必要になります。つまり地上部隊が佐賀にあろうが沖縄にあろうが、このケースではどちらでも差が生じません。ただし既に述べている通り、強襲ヘリと陸戦部隊が揚陸艦の援護無しで作戦を行う場合を考える都合上、佐賀県配備は出来ません。」
 裏を返せば、「強襲ヘリと陸戦部隊が揚陸艦の援護無しで作戦を行う場合」を除けば、佐賀・長崎方面への配備が可能になりうるようです。なるほど、勉強になります。
 で、これまでの立論を検討する限り、「強襲ヘリと陸戦部隊が揚陸艦の援護無しで作戦を行う」可能性は、低いです。つまり、斬首戦略の実現可能性は、低いのです(正確には、真剣に検討するに値するかどうか疑問符がつく、というべきでしょう)。そうなると、九州への配備は、実は比較的実現性の高い案なのかもしれません。
 だんだん、九州移設もいいような気がしてきます。もし国外が現状難しいとすれば、県外移設になるのですが、わざわざ県外にまで海兵隊の駐留用施設を新設してあげるのは、コスト的に厳しいです。その点なら、上記九州移設案は、魅力的です。(注3)(注4)
 ただし、変更すべき点として、辺野古地区に将来民間空港に移管されることを条件に基地を建設して普天間の海兵隊・航空戦闘部隊を辺野古に一時的に移転する、という箇所は、異論ありです。これは小川案の意見とも被るのですが、わざわざ基地を作らなくても、移設完了までの間は、暫定的に県外のどこかの施設においておくだけで大丈夫だろうと思います(暫定移設先の地元の合意を以って、が条件ですけど)。
 実際、「佐世保市相浦に米海兵隊が納得する施設を提供すれば、辺野古にわざわざ基地を建設しなくても、アメリカがロードマップの他の部分を撤回する事なく前進できると考える。」「相浦の自衛隊駐屯地だけでは、海兵隊の地上戦闘部隊と航空戦闘部隊の両部隊を迎えるには敷地が足りないので、その近辺に土地を提供しなければならないが、それに本土の人間が反対するようでは、沖縄の負担軽減など永遠に実現できない。」というご意見もあります(「普天間問題の解決案」『Just Another Day in the Life of KC』様)。この案が、比較的実現性の高い案だと思われます。

■番外編:エバン・エマール要塞の件■
 エバン・エマール要塞でのドイツによる奇襲作戦を例に挙げて、斬首戦略を肯定しようとする人もいるみたいです。この要塞への奇襲というのは、少数の特殊部隊で短時間で要塞を占領した、歴史的事例だからです。しかし、これを好例として用いるのは、難しいと思います。
 「奇襲降下部隊の配置に個人的興味をもったドイツ総統アドルフ・ヒトラーは自身の個人的なパイロットであるハンナ・ライチュからグライダーがほぼ無音で飛行できるということを聞いた後でグライダーの使用を命令した。これはベルギーの対空防御がレーダーを使用せず、音の探知を行っていたため」だそうです。エバン・エマール要塞の件は、奇襲部隊が敵に察知されないことによって、可能な作戦だったわけです。中国側のヘリコプターは、音も出ない上に、レーダーにも映らないのでしょうか。(お詳しい方は教えてください。)
 果たして、敵に探知されないような隠密かつ迅速な奇襲攻撃が、今回の斬首戦略には可能でしょうか。これが一点目。
 「エバン・エマール要塞の占領は、戦争においてグライダーを攻撃に使用した最初であり、同様に成形炸薬を最初に使用した戦いである。ヴィッツィヒにより率いられたグライダーは要塞の「屋根」に着陸した。そこで、彼らは、砲塔を破壊し無効化するために成形炸薬を使用した。」
 この戦いは、「成形炸薬を最初に使用した戦い」でもありました。つまり、最新テクノロジーが使われた闘いだったのです。成形炸薬によって、砲台は破壊されました。ベルギー軍は、この展開を予想できていなかったのではないでしょうか。中国側は、成形炸薬に匹敵する最新の兵器などを使ってくるでしょうか。これが第二点。
 後者はともかく、前者は大変重要です。もしかしたら、ヘリの場合、低空であればレーダに察知されにくく、音もでにくい、という特性があるのかもしれません。しかし、それでもなお、疑問点はあります。
 「ドイツ軍の降下猟兵部隊のいくつかが要塞を襲撃、要塞内のベルギー軍駐屯部隊の動きを封じ、要塞内の火砲を使用不可能にしたため、ドイツ軍は運河上の3つの橋を同時に占領した。要塞を封じたドイツ降下猟兵部隊はドイツ第18軍と合流するまで橋をベルギー軍の反撃から防衛するよう命令された。」
 ここからわかることは、降下猟兵部隊以外の部隊が、橋を占領する役割を与えられていたことです。つまり、その部隊以外にも、兵隊はいたのです。ドイツ軍「493 名[1]」に対して、ベルギー軍「推定で1,000名以上」。仮に、「ベルギー駐屯部隊は2,000名」だったとしても、1:4の割合です。もちろんこれらの部隊は特殊部隊ではないので、そこは差し引くべきですが、奇襲に必要な人数比率は、1:4 程度が限界ではないでしょうか。
 人数だけならまだしも、「ベルギー軍の計画では要塞と付属する防衛拠点の駐屯部隊が攻撃に対して持続的な戦いを行うことを要求しておらず、運河東岸の分遣隊が撤退、橋を破壊し、遅滞行動のために戦う準備ができるように攻撃前に十分な予兆があると仮定していた。防衛部隊はその後、デイル川沿いの主防衛線へ撤退、そこで連合軍と結びつくことになっていた[8][9]。」という以上、要するに、確かに戦略的な要衝であったにせよ、この要塞は、時間稼ぎ用のものでした。この点を考慮する必要があります。本件の奇襲の成果を、斬首戦略の有効性の証拠にしようとするなら、この点までも考慮が必要でしょう。(注5)
 以上、エバン・エマール要塞の件への突っ込みでした。次回は、スプラトリー諸島と中国脅威論についてのお話になると思います。
(上記、Wikipediaの「エバン・エマール要塞の戦い」・「エバン・エマール要塞」からの引用を使用)

(続く)


(注1) 大陸側による台湾占領の可能性については、田岡俊次『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』もご参照ください。2007年に書かれた書物であることは割り引くべきでしょうし、しかも元帥の著作なのですが、彼の述べる結論は、正しいものと思います。元帥の斬首戦略への見方は、拙訳ですと、「斬首戦略?、そんなもん、中共軍が台湾を正面から攻めたら絶対無理だって分ってるから、苦し紛れに出した戯言だろ。逆にこんなもん出してくる時点で、中共が台湾を占領するのが無理って分っちゃう訳ですよ。」となります。

(注2) 沖縄に基地だけ作っておいて、部隊が使えるようにだけしておくという議論ですが、批判される点も含みます。
 「普天間の部隊は大部分が移転するけれど、基地はそのまま維持しておいて、必要なときだけ部隊を戻す、という形です。あるいは普天間以外の基地でもいいですが、とにかく情勢不穏となった時にだけ沖縄へ移動する形です。」(「普天間移設、および軍事は政治の道具だということの意味(追記あり)」『リアリズムと防衛を学ぶ』様)。
 この議論に関して、丁寧にデメリットが指摘されています。「情勢が緊張した時には、部隊を沖縄に移動させるという行為、それ自体がさらに緊張度を高めてしまいます。だから下手をすれば「まずい、沖縄に部隊が帰ってきたら手が出しにくくなる。じゃあその前にイチかバチか」と中国に決意させてしまうかもしれません。」

(注3) 補足として、江畑謙介『米軍再編』の2006年時点での議論も引用しておきましょう(「沖縄基地移転問題」『「軍事板常見問題&良レス回収機構」』様)。
 「「いつでも海兵隊が沖縄ないしは日本にやってこられる」という能力を具体化し,示して見せねばならない.(略)それには沖縄,ないしは本土に事前集積船からの装備を降ろし,近くの飛行場に空輸されてきた海兵隊員と合体させ,その装備を持った海兵隊員がかなりの大きな部隊規模で訓練を行える場所を確保する必要がある.(略)本土では,例えば後述する九州に港湾施設と装備と兵員を合体させる場所,そして訓練場を(日米共同使用の形にせよ)確保できないだろうか.(略)海兵隊の遠征部隊(MEU)を載せる揚陸艦部隊が佐世保を母港としているなら,九州に沖縄の海兵隊部隊を移転させるという方法も考えられるのではないか.(略)いっそのこと沖縄の海兵隊部隊の大半を,九州に移動させるという方法も検討してみる価値があるだろう.
 全部とは述べておりませんが、大半の海兵隊を九州に移設させることは可能かもしれない、と江畑氏は述べていたようです。グアム移設分も考慮すると、残りの部隊の九州移設は、実現性が高いように思います。確かに、2007年度版の『米軍再編』にはこの事柄は触れられていません。しかし、2007年度版が2006年度版と補完関係にあることは、江畑氏自身があとがきで述べているので、九州移設の可能性は、やはり高い実現性があるように思うのです。

(注4) グアムには本当に、沖縄の海兵隊全部を移設するには収容能力に限界があるのか。これに関しては、地元側の意見として出されていることであり、実際どうなのかはこちらにはわかりませんが、地元の主張としてまずは受け入れるべき事柄と思われます。問題は、グアムの基地拡充により、グアム経済の基地依存が促進されるのではないか、ということです。これについては、拙稿「グアムでポリネシアンダンスという不可思議」をご参照ください。

(注5) 「当時ヨーロッパの要塞や保塁に配置されていたのはいわゆる要塞部隊と呼ばれるものであった。それは第一線の歩兵部隊として戦闘に従事したり、行軍したりという事にはもう不向きな年配者の徴収兵から成る部隊に付けた体裁のいい名称であり、十分な歩兵用装備や輸送力に欠け、時代遅れの攻城砲だけ」という主張は、本文を考慮に入れると、やはり事実なのかもしれません(「B軍集団」『ドイツ国防軍の軌跡』様)。


<参考文献> 小川和久『ヤマトンチュの大罪』


(追記) (注3)で紹介した、『「軍事板常見問題&良レス回収機構」』を見たら、次のように書いてあった。「ただし2010年現在は,中国の台湾に対する斬首作戦への抑止力が必要であるため,米海兵隊の在沖縄基地を県外に移設することは,非現実的だと考えられている.」
 吹いた。アホ丸出しじゃなイカ。2010年以前から、斬首戦略の存在は明らかだったはずである。実際、2005年には既に読売新聞で紹介されていたことは既に書いた。にもかかわらず、江畑は上記の通り書いたはずなのである(小川については、すでに事情を書いた)。取ってつけたような理由を、もっともらしく付け加えるのは、みっともないからやめようね。 (以上、2010/12/26)
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