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労働組合強化のために -EUの事例から-  濱口桂一郎『新しい労働社会』(7)

■労働組合強化のために -EUの事例から- ■
 「そこで現に働いている人たちがそこのルールを作っていくべきだと思っています。そのためには、そこで働いている人たちがその場で団結しなければしょうがないのですね」という著者の主張を叶えるには、どうすべきでしょうか(「S/Hさんのアマゾンレビュー 星4つの理由」『EU 労働法政策雑記帳』様)。労働組合・労働者代表制を、どう制度的に整えるべきか。
 「労働組合の強制設立、強制加入に近いことまであえて」言及した著者は、過半数組合となった企業内組合に、どのような制度によって権利を付与するのでしょうか(「拙著批判のつぶやき」)。
 まず前提として、「近年ヨーロッパにおいても団体交渉を企業レベルや事業所レベルに分権化する傾向が強まってきており、欧州委員会も2007年には欧州労使協議会を企業レベル団体交渉の場として活用する方向に向けた法制提案を行う予定にしている」ことが重要です(「労働者参加に向けた法政策の検討」連合総研『労使コミュニケーションの新地平-日本における労働者参加の現状と可能性』)。欧州でも、交渉のレベルを、企業や事業所に置くようになったようです。詳しい事情はわかりませんが、著者の主張は必ずしも、先進国では、時代遅れではなく、むしろ時流に乗っている模様です。
 では方法を(勝手に)考えましょう。

 ①「まず、派遣労働者の参加を認めましょう」
 例えば、「ドイツでは、派遣労働者は派遣3か月以降は派遣先の労働者代表選挙に参加し、集会や面談を行うことができるほか、苦情処理も利用できる」そうです(「派遣法をどう改正すべきか-本丸は均衡待遇」『世界』3月号原稿 )。最低限まず、取り入れるべきでしょう。派遣労働者も、一定期間過ぎれば、メンバーとして扱う必要があります。これは、これまでの主張から当然のことです。
 「「雇用の流動化」の裏返しとして働きつづける権利が脆弱だから職場で労組に加入しても組合差別以外の理由を付けて簡単に辞めさせられてしまう」というなら、制度で縛ってしまえばいいのです(「雇用流動化肯定論に欠けた人権の視点」『ナベテル業務日誌』様。制度だけで解決する問題ではないとしても、です。

 ②「労働組合のない企業にたいして、ナショナルセンターは介入しよう」
 更には、「企業外の労働組合(産業別組織又はナショナルセンター)による援助連携を労働者代表委員会に組み込んでおく必要がある。具体的には、経営側から協議を受けた場合の職場討議の遂行や意見集約方法、法制的な知識についての研修などが考えられる」(前掲「労働者参加に向けた法政策の検討」)。確かに、「経営側から協議を受けた場合の職場討議の遂行や意見集約方法、法制的な知識」のようなテクニカルな事柄は、特に労働組合のない企業において実に労働者たちにとって有益です。
 現在でも労働組合の無い中小企業等においては、こうした「介入」は十分有効に働きます。これは、「EU指令においては「外部の専門家の援助を受ける権利」という形で規定されている」そうです(前掲「労働者参加に向けた法政策の検討」)。これが明示的に規定される必要があります。(ただし、零細企業だとこれも難しいのですが)
 なお、「欧州労使協議会指令は大きな進展ではあったが、フレデリング指令案と違って国内の中小企業は対象に含まれていないし、欧州会社法案とは異なり参加の規定もない。これら積み残し部分の実現は依然として課題であった。これらが最終的に成立に漕ぎ着けたのが昨年2001年であった」、と欧州でも、中小企業にまで範囲を拡大するのは容易ではなかったようです(「EU及びEU諸国における労使協議制の発展」『「月刊自治研」2月号原稿』)。長い道のりですが、これは労組再生に不可欠です。

 ③「組合への便宜供与を与えよう」
 「日本では1949年労働組合法が組合への便宜供与を不当労働行為として制限しているが、スウェーデン法はむしろそれを義務づけている」(「EU一般労使協議指令の実施状況」『生活経済政策』10月号原稿 )。瑞国では、必要な時間は有給で組合代表の活動を行うことができ、時間外に及んだ場合も使用者負担です。日本においては、企業内労働組合の新設・躍進のために、せめて、「任務遂行に必要な時間は有給で組合代表の活動」を行うことできるよう取り計らうべきでしょう。これだけでも、組合に取り組むインセンティブはあがります。(「労使委員会であれば便宜供与が可能である」のですが。)

 ④「労働者代表に対して、情報提供・協議の義務を定めよう」
 EUの一般労使協議指令では、使用者は労働者代表に対して、情報提供・協議の義務を定めています。「労働者代表のいかなる意見に対しても理由を付した回答がされるべきこと、そして使用者の権限内である限り、「合意に達する目的をもって」協議すべきことが規定されて」います(「企業のリストラも結構、しかし労働者代表との事前協議が必須!」『月刊連合』2002年7月号原稿)。「使用者側から一方的に言いたいことを言って問答無用という訳にはいかない」わけです。
 では、一般労使協議指令が出た当時の、EU諸国の事例を見てみましょう。つまり、この指令が出る以前でもこれくらいは行っていた、ということです。
 フランスは最たるもので、「労使協議会は、資格ある会計監査人を呼んで、これが会社会計、連結会計、会計予測の年次検査を実施し、経済的理由による大量解雇の際に執られる措置を分析し、緊急の権利に基づいて会社の経営状況に深刻な影響を及ぼすおそれのある状況について報告書を作成し、この報告書を会社の監査役及び取締役会に提出するといったことのために会社の監査役と同等の情報にアクセスする権利を認められている」(以下前掲「EU及びEU諸国における労使協議制の発展」)。深く会社経営に関与しています。
 オランダでは、労働組合に「不健全な経営の疑いに基づき商工会議所の専門家によって審査する権利が認められ」ています。ポルトガルの場合、「労働者委員会に予算と事業計画を診察し、意見を述べる権利がある」とのこと。
 労働組合が労働者委員会を兼ねるようになった暁には、最低限当時のポルトガル並みの事をすべきでしょうし、やがて「労働者代表のいかなる意見に対しても理由を付した回答がされるべきこと、そして使用者の権限内である限り、「合意に達する目的をもって」協議すべき」ことが、義務付けられるべきです。

 以上、制度的に、どうすべきかを見てきました。大切なのは、「合意に達する目的をもって(with a view to reaching an agreement)」という文言です。労使協議の内容を空疎にしないことです。企業内組合を強化する目的は、これに他なりません。道のりは遠いのですが。
 ( 労働者側の経営参加については、ここでは省略しました。)

(続く)

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