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「よい」公共事業の話、そして金融政策との連係プレイ 小島寛之『容疑者ケインズ』(1)

 もうすぐ八月です。まあ、月日とは関係なく、小島寛之『容疑者ケインズ』など読んでみるとしましょう。おさらいということで。

■乗数効果と、「よい」公共事業■ 

(引用者注:小野善康の論文をまとめて曰く、) 政府が税金から二兆円を使って公共事業を行っても、国全体の生産物は二兆円分増えるわけではなく、作られた公共物の実質的価値が半分の一兆円なら、一兆円分しか増えない (39、40頁)

 このごろ流行の小野先生の話です。いってるのは、乗数効果の否定ですね。そして、公共事業の効果が限定的であることを述べています。
 著者である小島氏の意見では、「政府が公共事業を行う場合は、総生産に加わる価値はその公共事業が追加した価値ただそれだけであり、ほかはびた一文ない。」「国民の所得は一切増えず、増加しているのは公共部門の作った公共物のモノとしての価値(これは私人のものではない)だけなのである。」だそうです(小島寛之「乗数効果なんて、幻なんだってば」)。
 公共事業は基本的に、国民の所得は一切増えず、ただ、公共物の価値だけ増える、と。これによって、「「景気対策」としての財政政策の価値は、いまや完全に否定されてしまったといっても過言ではないだろう」とおっしゃってます。
 批判する内容は、要するに、【公共事業によって、総生産と国民所得の額面だけは増えるだろうけど、結局国民の税金を国民に戻しただけであって、あくまで額面上のこと。その公共事業で出来たものの価値を除けば、ただ金を動かしただけでしょ】というもの。
 まああくまでも、「内容を問わない公共事業」を否定しているのであって、「所得増加が生じるなら財政政策の意義もある」ので、そこは肯定しているわけですね。小野が、一定条件付で、公共事業を肯定しているのは、このためです。
 そして、彼の【限定的公共事業論】が批判される点は、誰が内容ある公共事業を選べるのか、という点です。そんなもん官僚に選べるわけねぇだろ、というのが批判者たちの言い分です。まあ、この批判は間違えではないでしょうね。(注1)

■公共事業(財政政策)には、金融政策がセットです■
 ちなみに、乗数効果及びそれを背景とする公共事業において、指摘される問題としては、次のものもあります(「乗数効果 - Wikipedia」)。
 「国際的な取引を考えない閉鎖経済では需要の拡大はそのまま国内生産の増加に繋がるが、国際貿易を考慮すると国内需要の増加分の一部は輸入の増加となって海外に流出してしまう。」「金融緩和を伴わない財政政策の発動により、金利の上昇をまねくことがある(クラウディングアウト)。金利上昇が設備投資の抑制要因となるほか、金利上昇は自国為替レートの上昇(日本で言えば円高)を招き、輸入の増加による国内需要の流出、輸出の減少による外国向け需要の低下から乗数効果を打ち消す働きをする。」などです。
 要するに、①公共事業で国内需要を増加させても、一部は輸入増加になって消えちゃうし、②金融緩和をして、金利上昇を抑制しないと、金利上昇が国内設備抑制につながって相殺されてしまう、③さらに、金利増加は、円高につながるから、輸入が減少して、やはり相殺されちゃう、ということですね。特に、②と③は深刻です。
 財政政策と金融政策はセットで考えるべきだ、ということです。金融政策を、馬鹿にしちゃあいけません。この点を指摘した簡易な本として、暗黒卿こと高橋洋一『霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」』を挙げておきましょう。(注2)

 次回は、小野先生とリフレ政策の関係について、何か書きます。たぶん。


(注1) 本件に関しては、「菅直人首相とその経済ブレーン小野善康・大阪大学教授との考えかたの違い」(『極東ブログ』様)が重要。曰く、「菅直人首相とその経済ブレーン小野善康・大阪大学教授との見解の違いは明確になった。小野氏の主張の根幹は、3点である。(1)重要な問題はデフレ解消・雇用創出である、(2)そのための消費税導入は急がなければならない、(3)消費税より所得税が好ましい。」
 確かに、景気対策を重視するなら、金をなかなか使ってくれない(はずの)高所得者層の方に、負担を求めるべきだというのは、正しいでしょうね。

(注2) 暗黒卿は、同書で、公共事業をやるなら慎重に、ベネフィットがコストの3倍以上の場合のみやる必要がある、と述べています。まあ、最初の計画なんて当てにできないからですね。
 なお、「やはりワカらん。なぜ経済学では互いに相容れない主張が乱立するのか」(『kojitakenの日記』様)という記事で、興味深い指摘。
 曰く、「金融政策抜きで再分配しようとすると財源無くて絵に描いた餅」とも書かれているが、「みんなの党」流の「小さな政府」路線において、金融政策だけで再分配の原資となる税収を確保して再分配を実施することができるのだろうか。」
 インタゲ政策も、国民・企業にインフレの期待を抱かせる、という不確定なハードルがあるため、飯田先生は慎重なんでしょうかね。まあ、リフレ派の中には、金融政策だけでなく、財政政策とのセットプレイを唱える方たちもいらっしゃいますね。で、その際、財政政策だけでなく、金融政策も必要になります。少なくともそういう意味でなら、金融政策抜きでは、財源稼げません。まあ、無理やりですが、こういう解釈も可能です。


 (追記) 「セットプレイ」というのは、サッカーにおけるフリーキックとか、そういう名前であったことを忘れておりました。ですので、「連係プレイ」に題名を変更します。<(_ _)>

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