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具体例から見る社会調査の方法 谷岡一郎『データはウソをつく』(1)

谷岡一郎『データはウソをつく 科学的な社会調査の方法』筑摩書房 (2007/05)

 世間に溢れる「社会調査」、このいかがわしい情報をを切り倒していったのが、著者による名著『「社会調査」のウソ』でした。今作は、社会調査の「方法」(注意点など)の紹介に重点が置かれています。
 具体的にどんなことを言っているのか。いくつか紹介しましょう。本著については、内容を章立てごとに解説・紹介するよりも、面白くてためになる「社会調査」の具体例(つまり、主張と反論)を紹介して行く方が良いと考えます。

 ミシシッピ州のチュニカという街でカジノが合法化されたとき、通貨供給量と失業率が反比例した。つまり、好景気になって通貨の供給は増えたのに、失業率が上昇した。これは、ケインズの理論、「通貨供給量と失業率が反比例の関係にある」に反している。
 これに対して著者は、周りの州から失業者が押し寄せたために、好景気なのに失業者が上昇した、と反論し、「理論が予測した結果が現出」しなくても、きちんとした説明(弁明)ができれば、その理論は否定されないと述べます。著者は、これによってケインズを「擁護」し、社会科学と自然科学の違いを具体的に説明するのです。

 カジノが建設された地域ではギャンブル依存症患者が統計的に急増している、という意見が出ます。これに対し著者は、それは、現在のカジノのある地域では、依存症のホットラインとか相談所の案内の、厳しい設置義務があって、それまで、依存症を自覚していなかった人や、病依存症を自覚しても相談できていなかった人たちが、ホットラインや相談窓口に来るのではないか、として、このような他の要因も考えるようにと反論しています(六七頁)。原因は一つ、と真っすぐにとらえてはいけないのです。

 日経新聞の読者は内定率が高い、という主張に対しては、①コネを持てるような社会的地位の高い人が日経新聞を読むのであって、②ゆえに、家に置いてある日経新聞を読むその子供は、コネがもてる、③そもそも、日経新聞をはじめ、活字を読まない人だから、内定率が低いんじゃないか、とのべます(七九、八〇頁)。
 然り、というべきでありましょう。評者は、③の可能性を最初に想定しました。①と②についても、コネに限らず、学習環境の要因もあると考えます。コネだけではなく、金銭的に恵まれ、より良い就学環境にあったことなども、考えられるのです。良い就学の環境が、その人の能力を上昇させ、彼は内定をとる、という構図です。ただ、著者は、能力のあるやつが、(会社の中身を別として)内定を取りやすい、というのを、甘い話として信じていないのかもしれません。

 大学受験と時に数学を履修していた人は年収が高い、という主張に対しても、懐疑を向けています(八二~八四頁)。勉強できた人は、国立も目指して、その際数学を履修します。そして、その分高い地位を目指しやすい。しかし、勉強できない人は、国立を断念して、その過程で数学を捨ててしまう。国立を捨ててしまう学力に見合った学校に入るので、その分高い地位を目指しにくい、といいます。
 これにも賛成です。受験の「現場」を想定すれば、そのような可能性も浮かんでくるはずなのですが、この簡単そうなことこそ、やはり難しいようです。

(続く)

TAG : 谷岡一郎 社会調査 日経新聞 内定 ケインズ

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