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周回遅れの「反ケインズ派」批判(?) -あるいは、"リフレの父・ケインズ△というお話"-

 伊東光晴『現代に生きるケインズ』を読む。



 著者は、ケインズは乗数効果にも懐疑的で、IS-LM分析にも否定的だったという。

 例えば、乗数効果にしても、「直接的雇用が、全体として、どの程度の雇用増をもたらすかと言う統計的推測」にすぎないのであって、「アメリカ・ケイジアン」のいうような「理論的関係」ではないという(122頁)。
 この乗数効果が成り立つためには以下の点に注意が必要だと言う。
 「ある企業が需要増の一部だけを生産増によって対応し、一部を在庫減によって対処」すれば「波及は少なく」なり、「需要以上に生産を行う企業があるならば、波及は大きくなる」。
 要は、特殊な仮定の上でしか成り立たないので、理論失格だ、と言うのが著者の意見。
 理論失格って・・・正直、気にしすぎのような気もするけど。
 かの小野先生も乗数効果には否定的だったけど、あれは、"同じ金なら、公共事業に使おうが、直接お金をばら撒こうが、効果的には等価だよ"と言うニュアンスでしたっけね。
 小野先生の批判の方が、批判としてGJだと思う。



 著者はIS-LM分析と貨幣数量説を批判している。
 ケインズがそれらに否定的だったという。
 一読する限り、これ自体は、実証的に正しいのだろうと思われる。

 もっとも、現在主流のニューケイジアンたちは、素朴なIS-LM分析は使わないだろうし、当然、"期待"をすら考慮しないナイーブな貨幣数量説は、支持すらしないだろう。
 そういう意味では、正直、この手の批判は、周回遅れだという気がなくもない。
 実際は、"期待"込みの貨幣数量説(?)であったり、動学的一般均衡モデルに基づいた新しいIS-LM分析が、メインストリームです。

 著者の批判の要点は、"貨幣量(マネーサプライ)の増加が、そのまま、物価や利子率に反映したりするなんてことはない"というもの。
 でも、そんな主張、上記の通り、ニューケイジアン全盛の昨今では、だれもしてませんよね。
 この本、著者の仮想敵が誰なんだが、正直良くわかりません。

 そもそも、ケインズ『一般理論』を読む限り、むしろリフレ政策への肯定的なニュアンスさえ、あるのです。(詳細は、田中先生のブログの「ケインズ自身の「流動性の罠」からの脱出法」という記事がお勧めです。)



 著者は一応、「投資の限界効率」という、まさに将来への"期待"に関わる重要なタームにも言及している(179頁)(まあ当然だけどね)。
 また、ケインズ『一般理論』の主張として、
 "労働者の関心は、自分と同じくらいの境遇、技能の持ち主と比較しての賃金格差にあるのであって、実際その人より自分の賃金が低い場合だと強く反発をする。けれども、物価が上がる一方で、全ての人の賃金は据え置きになっても(つまり、実質賃金の低下になっても)、反発はそれほど起きない"
 という旨のことを著者は書いています(199頁)。
 あれ、これって、"マイルド・インフレのススメ"そのものじゃないのw

 なんか、惜しい本だなあ。
 "モラル・サイエンス"の話とかは悪くないのに。




 とりあえず、伊東本よりも、宇沢『ケインズ「一般理論」を読む』の方が良書じゃないですかねw

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