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Jカーブ効果を批判した例 番外編:谷岡一郎『データはウソをつく』

 酒の「Jカーブ効果」は、ACSH(米国保健科学協議会)のレポート(1993年6月)をその源流としています。このレポートでは、各国の医学関係者、研究機関による研究報告を調べた結果、「適量の飲酒は、死亡率を低下させる」という結論を下しています。このレポートでは一応、アルコール許容量の個人差などについても、言及しています。
 先日のブログでは、「Jカーブ効果」に再現性がない、ということを書きましたが、どうやら、Wikipediaなどの記事を見ると、それを裏付けるような論文は出ているようです。ですので、今回は、Jカーブ効果」について、再現性を裏付ける論文が出てもなお、反論できるような論を紹介します。

 「Jカーブ効果」に対しては、『二郎の日記』様が、「人種」という観点を見過ごしていると批判しています。酒に強い人種と弱い人種を考慮せよ、ということですね。
 「私は飲酒量と寿命の因果関係は存在すると考えております。その因果関係をJカーブが表しているとも考えております。」とおっしゃっているので、どうやら、Jカーブ効果についてはある程度までは肯定されているようです。また、「適度のアルコールにより虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症)などの循環器系疾患のリスクが低下する結果として、Jカーブが示されていると考えて」おられるみたいです。過度の飲酒を諌めることが本来の目的であったACSHの調査を信用しておられるようです。しかし、

 「日本人の中でも、お酒を飲める体質の方と、飲めない体質の方を識別して調査しなければ、有益な情報にならない (中略) お酒を受け付けない体質の方では、おそらくJカーブは存在せず、飲酒量と寿命の関係は負の相関しか無いだろうと思います」

 とも述べており、「体質」という観点に注意を向けています。
 これらの批判は、先の「Jカーブ効果」の論文の意図に沿ったものといえるでしょう。この論文は、アルコール許容量の個人差などについて言及しているからです。これは批判というより、注意書きに近いものかもしれません。

 もうひとつ、これは海外のものですが、「Alcohol’s Good for You? Some Scientists Doubt It」『The New York Times June 16, 2009』は、以下の点について述べています。タイトルを訳せば、「アルコールは体にいいの?疑う学者も」となりましょうか。
 内容を一部をかいつまむと、以下のとおりです(要約ではありません)。

「適度に酒を飲む人は、煙草を吸わないし、適度に運動するし、適度な食事をする。どれが健康となる最たる要因でしょうか。」

「調査を担当する研究所は、アルコール飲料の業界から金銭的に援助を受けている。」

「ほどほど酒を飲む人と禁酒する人は、比較ができないほど異なる存在だ。前者は、健康なだけでなく、いっそう裕福で、より良い教育を受けている。煙草を吸ったって、健康を管理する環境には恵まれている。」


 では、言わずもがなの解説です。まず、最初の主張。酒を飲むのに適度に留めおける自制心の持ち主なら、ほかの事柄でも健康に気を使う、と考えるのは、自然でしょう。もちろん、この推論に反論する人もいるでしょう。ただ、「適度な酒→健康」という単純な回路は疑うべきなのです。
 つぎに、調査する主体自体が、調査対象からの援助を受けている、というのは、調査の信憑性を失わせます。もちろん、すべての研究所・研究者が、業界から献金をもらっているわけではないのでしょうけれども。
 最後のものは、最初の主張の延長線上にあります。つまり、ほどほど酒を飲む人は、健康なだけじゃなくって、健康維持をするのに恵まれた環境を得られる裕福さを持つというのです。酒を飲む量だけでなく、健康を維持する環境の違いにも眼を向けるべきだといいます。
 もちろん、この主張に対しても、じゃあ証拠を挙げろ、という反論があるかもしれません。しかし、「階層」という観点を交えることは、この研究には必須と思われます。たぶん誰もやっていないと思いますし(推測ですが)。(注1)
ちなみに、このニューヨークタイムズ紙の記事には、前日紹介した、谷岡氏の意見に近い主張もあります。見つけてみてください。

 以上、Jカーブ効果への批判的な論説を挙げてみました。もちろん、上記の批判を克服した研究というものもあるかもしれません。ですから本論はあくまで、どのような批判が「Jカーブ効果」にできるのかを紹介したものと見なしてください。
 それにしても、本論は、つくづく権威頼りです。著者の理念に反しています。これについては反省します。ただ、適切な飲酒と健康の関係を疑うだけでも、これだけ疑える要因があるというのは驚きです。皆様もこの「Jカーブ効果」の是非を考えてみてください、と述べて今回は逃げることにします。

(了)


(注1) 健康と経済的格差の統計を主題とした論文は存在していました。詳細は、拙稿「「漏給」問題への対策と、Jカーブ効果批判」をご参照ください。

(追記) 「冬眠もまた暁を覚えず」という『五月原清隆のブログハラスメント』様のブログ記事では、Jカーブ効果を真正面から批判を行い、今後の飲酒のあり方については、「酒税の大幅な引き上げと小学校からの科学的な禁酒教育とで、ジワリジワリとアルコールの居場所を奪っていく」と提唱しておられます。荒っぽくも頼もしい主張と思われますので、御一読推薦します。

TAG : Jカーブ効果 社会調査 谷岡一郎 飲酒

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