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結局、「コンプライアンス」の適切な訳語は何でしょうね? -郷原信郎『検察が危ない』を読みながら-

 郷原信郎『検察が危ない』を読む。



 検察は、90年代のゼネコン絡みの事件の時、結局業界の談合構造そのものに手をつけなかった。それどころか、指名競争入札から一般競争入札になって、業者間の"調整"行為は巧妙になった、という(112頁)。
 要するに、従来の捜査方法を変えなかったツケが、今にわたって回ってる、というわけか。



 検察の特捜部は、基本休日はない。土日、祭日も出勤。プライベートなし。数ヶ月に一度、数日休みがある程度(122頁)。
 勤務も深夜まで。
 ハードすぎw

 しかも、仕事の自由もない。
 特捜部の捜査で、自分で考えて判断するのは、部長や主任検事クラスのみ。その下は、指示されるままに取り調べを行う(125頁)。
 拘束時間は長く、自分のペースで仕事が出来ない。自由がない。ずっとない。
 これじゃあ、判断能力の低下は避けられない。
 こんな毎日だと、「どうでもいいから早く決着をつけてくれ。逮捕してしまえば二十日で済む」と考えちゃっても無理はない。
 まさに、思考停止になってしまうのだ。

 給料はもらえるけど、すっごく、やりがいのない職場だなあ。



 著者は、執筆当時にあった、政治資金規正法改正案の件に批判的¥(163頁)。

 改正案だと、会計責任者の違反さえ摘発できれば、代表者、つまり政治家の監督責任を簡単に問える。
 この政治資金の報告書の案件では、検察が罰則を適用するか否かを判断するので、法改正したら、検察の意向次第で、政治家の政治生命を奪えちゃうようになる。
 ただでさえ強力な検察の力が更に強まってしまうわけだ。



 著者の考えは次の通り。

 最終的には、特捜検察に期待されてきた、政界捜査や経済犯罪捜査などに関する捜査機関の機能を、検察庁から切り離し、新たな重大犯罪捜査の専門機関を創設することが必要(185頁)。
 これが、中長期的目標。

 まずは、取調べ可視化。著者もやや慎重だが、少なくとも、検察の独自捜査についての取調べは全て可視化すべきという(187頁)。
 曰く、重大凶悪事件とかだと、自白に頼らざるを得ないから、その点難しい面がある(犯人未検挙だと社会不安を招く)が、検察独自捜査の政治がらみ・経済絡みの案件なら、そうじゃないはずだ、と。
 (個人的には、全面可視化賛成。自白云々の案件については、司法取引導入とかで対処するしかないのかも

 多数の検事からなる"常備軍"を保有する特捜部の現体制も変える(189頁)。
 捜査が本格的な段階になるまでは、正直、そんなに人は要らない。
 なので、現在特捜部の検事のうち、財政経済班所属の人間を除く大半を、東京地検のほかの部署や全国の地検に併任の形で配置し、一般事件も担当させ、一方で、特捜事件の一部も担当
する。
 こっちの方が、確かに合理的だ。



 ところで、この著者は、「コンプライアンス」という語を、ただ単なる「法令遵守」と解釈するのではなく、社会の要請に対して応答することだ、と捉えている。
 詳細は、本書や、最新刊の『組織の思考が止まるとき』をご参照いただきたいが、至極全うな指摘。
 
 コンプライアンス[com;liance]というのは、たしかに「順法」という意味だが、形式的に法律の字面に従うだけになってしまう、というわけだ。
 形容詞のcompliantだと、「迎合的な」という意味さえあるw

 しかし一方で、この形容詞には「協力的な」という意味もある。
 また、complianceには、「人の願いなどをすぐ受けいれること」という意味もある。

 コンプライアンスを"社会の要請に対して応答すること"の意味を強くして語訳すると、(正直訳しにくいけど)単に「規則応諾」とか、「規範応答」と訳した方がいいかも。
 個人的には、「規範応答」が一番いいと思う。

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