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ミサイル防衛を考える際の3つの前提 豊下楢彦『集団的自衛権とは何か』(2)

ミサイル防衛を考える際の3つの前提■

 迎撃できる可能性はきわめて小さく、たとえ迎撃に「成功」したとしても、日本の国土で核爆発が起こるか、広範な核汚染にみまわれるのである。 (129頁)

 ノドンに核弾頭が搭載されていたら、という最悪の仮定での話です。核を搭載したミサイルの場合、たとえ撃墜しても、核の汚染は避けられません。
 江畑謙介氏は、都心のミサイル防衛について、「都心に向かってきても撃ち落とせるだろう」と迎撃システムを信頼していますが、対処方法については「降り注ぐ破片を避けるために、情報をキャッチし、家などの建物の中にいるようにするしかない」といってます(「北ミサイル 迫る“Xデー” 見えぬ恐怖どうすれば」『産経ニュース』)。
 破片というのを、核汚染ないし核爆発に変えて読んでみると、その被害は甚大であることがわかります。仮にミサイル防衛体制を完璧にしていても、相手が核弾頭を搭載したミサイルを持っていれば、仮にミサイル防衛システムで完全に迎撃できても、必ず重大な被害は出てしまうのです。これが、前提条件の一つ。(注1)

 そもそも米国の本土にある世界最強の核戦力をもってしても抑止できず、「核の傘」も機能しない相手に対し、日本に持ち込まれる程度の核によって、なぜ抑止が可能なのであろうか。 (206頁)

 日本核武装論に対するコメントです。ミサイル防衛信ずるに足らず、ゆえに、日本も核武装、という人もおられるようです。しかしよく考えたら、アメリカの核戦力でも抑止できないのに、日本が核をもっても、抑止力になるという根拠は薄弱です。
 核武装について徹底的に論議すべきだ云々、とよく言われる昨今ですが、この核武装論の効用とは、実質、【頭の体操】程度というのが実のところではないでしょうか(新手の【脳トレ】かも知れません)。
 なお、最近一部で流行しているらしい【核シェアリング論】については、「核兵器シェアリングという覚悟」(『週刊オブイェクト』様)をご参照ください。

 仮にミサイル防衛によって抑止が機能すると仮定しても、相手はそれを上回る兵器の開発にのりだし、際限なき軍拡競争がもたらされることになる。 (133頁)

 ここが、一番肝心です。軍事とか技術とかそういうのばかりに気をとられて忘れがちのことですが、技術のいたちごっこが、何より厄介です。
 ABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)という、弾道ミサイル攻撃をミサイルで迎撃する兵器配備を制限した米露(ソ連)間の条約がありました。1972年に結ばれたこの条約は、しかし、2002年にアメリカが脱退したため、効果がなくなってしまいました。
 この条約は、そもそも、各国の軍事的技術の競争の激化による、軍備増強と軍事費増大の悪循環を断ち切るためにできた条約です。亜門大介「哲学なき弾道ミサイル防衛」(『模型研究室トップページ』様)のいうように、「無限競争は相互に不利益が大きいと人々が思ったからこそABM条約は締結されたのです」。ブッシュ政権が事実上無効にさせたこの条約にこそ、ミサイル防衛論議の喧しい今にあって、考えるヒントが隠されています。

■ドイツが注いだ油■

 ドイツは同月一九日には、クロアチアの一方的な独立承認を閣議決定するに至ったのである。 (178頁)

 1991年12月の出来事。各国外相の批判にもかかわらず、ドイツはクロアチア独立を承認し、結果、旧ユーゴの紛争に対し、油を大量に注ぐ結果となりました。この承認は、現クロアチアの地域にいた少数民族であるセルビア人の権利保護をあいまいにしたまま行われています。無論著者は、それまでの経過にたいする、各国の責任も、忘れずに書いています。

■北朝鮮よりイランより、危険なパキスタン

 米国がイラク戦争の泥沼にはまり込み、あてどもなく大量破壊兵器を探し回っている間に、パキスタンから「ならず者国家」や「悪の枢軸」の国々への核拡散が進行していたのである。 (168頁)

  テロリストに核が流出するリスクが一番高い国は、イランでも北朝鮮でもなく、パキスタンであるというのが、著者の一貫した主張です。核保有国パキスタンは政治的に不安定であり、地理的にタリバン勢力の存在が非常に懸念される地域です。ムシャラフ政権(当時)が倒れた場合、政情が不安定となり、核の管理をどうするのか、というわけです。
 「核も、ミサイルもあり、テロリストが跋扈しているパキスタンの方が、かつてのフセインのイラクより、はるかに『脅威』なのではないか」。この問いが、パキスタンの核保有を認知してしまった日本に、今現在でも突きつけられています。


(注1) 本文では、核ミサイルを迎撃した場合の核汚染の被害について、「重大」と表記しましたが、実際どうなのでしょう。
 大気圏内で迎撃に成功し、弾頭の残骸や弾頭内の放射性物質が降り注いだ場合、「環境への影響は、原子力発電所の爆発事故や核爆発と比較すると、無視できるレベルと考えられている」という意見(Wikipedia:「ミサイル防衛」)から、「特に核物質がウランではなくプルトニウムだった場合、かなり毒性の強い物質ですから、その地上への影響が懸念されます。」という意見(掲示板での「noname#14038」様の意見)まで、ネットで閲覧する限りさまざまです。
 この分野に詳しくない人間としては、専門家による意見を伺いたいところです。
 ほぼ間違いないと思われるのは、①撃墜された核搭載ミサイルからの放射性物質の飛散は、核爆発が起きた場合よりは被害が小さいこと、②大気圏への再突入前に撃破してしまえば、核の汚染はほぼ防げる可能性が高いこと、この二点です。

(追記) 
 「昭和天皇・マッカーサー会見(岩波現代文庫)/豊下楢彦」(『読書日記と着物あれこれ』様)という記事を読みましたが、これを読む限りこの評者は、本書をよんだことが一度もなさそうです。もし本書を読んでいてなお、「政治的センスのカケラもないように思える」のだとすれば、自身の【読書的センス】を疑う努力が必要となるでしょう。

2009/12/7 一部修正

TAG : ミサイル防衛 核武装論 核ミサイル ABM条約 クロアチア パキスタン

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