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秘密警察・シュタージの傾向と対策、及び西側による東側の【搾取】 平野洋『伝説となった国・東ドイツ』(2)

■秘密警察・シュタージの支配方法■

 婉曲なやりかたとしては作家にいうんだ「紙がない」って。計画経済だから紙不足という事態もじっさいあったしね。さあーやっこさん悩むわけだ、なぜ自分の本は出版されないのか、本当に紙不足なのか、それとも……、と疑心暗鬼になる。こうなればこっちのものだよ。 (102頁)

 シュタージの支配方法の一つです。これが当時知識人たちに加えられた、支配の手法の一つでした。
 ソルジェニーツィンの小説を想起すべきでしょう(東浩紀「ソルジェニーツィン試論」を参照)。スターリン統治下のソ連では理由もなく人は収容所に入れられ、入れられた人は、なぜ自分は収容されているのか、そして、まだ生きているのかを問う姿に似ています。しかし、問いに応えられないわけです。
 出版と生命という違いはありますが、このような、疑心暗鬼の中で理由なき仕打ちに対して、なおも理由を考え込まざるを得ない、という点は同じです。

■シュタージへの抵抗基盤:カトリック教会■

 彼女は当時信仰心はなかったが、教会が唯一自分のような立場の者をうけいれてくれるのを知りそこで働く。彼女が選んだのはカトリック教会であった。 (62頁)

 当時、東ドイツで移住申請をする者に対しては、圧力が加えられました。そのような状況の下で、申請をしようとしたある女性は、カトリック教会に助けを求めました。
 プロテスタントの方は、シュタージとつながる牧師もいたらしく、彼女曰く、「東独内では少数派だが、ローマ法王を絶対者として国との関係はうすいし安心できた」とのこと。実際、教会と関って以降、シュタージの圧力はなくなったそうです。カトリック教会が、共産主義政権下で抵抗の基盤になりえたのは、ポーランドだけではなかったわけです。

■シュタージも手が出せない【怠惰】■

 職場では人びとはすることもなくブラブラし、一生懸命働こうという人もすぐにやる気をなくしていく。懸命に働こうが、怠けていようが給料はおなじだ。(中略)悪名高き秘密警察も、当局に反抗の意思などもたない労働者たちのサボりや欠勤などにたいしては手のうちようがなかった。 (56-7頁)

 シュタージは、反抗する者たちには弾圧・抑圧を加えましたが、反抗を意図しようとしない者達には、さすがに手が出せませんでした。旧東ドイツ地域などでは、昔の東ドイツの方がよかったという主張が聞かれるようですが、このような甘い【怠惰】は、十分魅惑される理由になるかもしれません。

■【搾取】される旧東ドイツ■

 東に大量の失業者を生みだした主因は九〇年夏に施行された「通貨同盟」政策によるものだ。東西ドイツマルクの交換比率を一対一としたために、東独は、ソ連・東欧市場を一挙に失った。品質は西独製品に劣るが、値段が安いということで東の企業の一部は生き残れたはずだが、値段が西と変わらないとなれば製品は売れず、企業は軒並みつぶれた。 (41頁)

 現在の東ドイツの現状の一因は、無謀な交換比率にもありました。「通貨交換は統一の第一歩となる事業だったが、「旧西ドイツの1ドイツマルク=旧東ドイツの2マルク」という非現実的な比率で行ったのだ(個人については、貯蓄の一部を1対1で交換することも可能だった)。ちなみに、1989年当時の闇市場では、1対10で交換されていた。」と、Bertrand Benoit による「ベルリンの壁崩壊から20年」(『JB PRESS』様)は伝えています。東ドイツと西ドイツの関係は、南北イタリアの存在を想起させます。

 西も損をする援助はしていない。事実、東独再建事業で西の建設業界は莫大な利益をあげている。一体誰のための援助かと批判がうまれるのもこのためだ。(中略)需給関係を無視したこの建設ブームの理由は、おもに企業による税金対策のためだ、と経営学の専門家の友人の説明で合点がいった。東でわざと損失をだし西で支払う税率を落とす、節税になり損を補って余りある。 (118頁)

 著者曰く、「この特別税制処置は九八年末まで。以後はちがう優遇税制がとられている」といいます。旧東ドイツ地域への、国の援助の【裏側】を伝えています。西側の建設企業の利益のために、無駄な建築物ばかり東側に作られていくわけです。要するに、情けは人のためならず。
 構図として似ているのは、日本のODAのあり方でしょう。ODAによる日本建設業界の海外進出は、事実上、海外において、日本の税金を日本の建設企業にバラ撒いてるという構図です(悪い側面だけでないにしても、です)。ともに、【後進的地域】を利用して、【先進的地域】の企業が潤うという構図を持っています。(注1)

(続く)


(注1) 東ドイツと沖縄との類似性を指摘する記事もあります。「ベルリンの壁崩壊から20年-ドイツにとってこの20年は何であったのか?」(『つれづれ なるままに  ほぼ毎日更新中 !!』様)という記事です。
 「復帰後は米国資本の誘致による経済的な自立という試みは、通産省によって事前に阻止され、米ドルから日本円への通貨統一は、結果として本土資本による土地買い占めを容易にしただけであった・・。しかも基地経済からの脱却はいっこうに進んでいない。」
 基地経済という点では、グアムもまた然りです。詳細は、拙稿「グアムでポリネシアンダンスという不可思議 山口誠『グアムと日本人』(1)」もご参照ください。

TAG : シュタージ ソルジェニーツィン カトリック教会 東ドイツ 西ドイツ ODA

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